保温性は床材の重要な性質です。畳は床仕上げ材として使用したときの実際の保温性に極めて優れています。
実際に床材として用いる場合、畳やカーペットは根太:ネダ(床板を支えるため床の下に渡す横木)やフローリングなど他の床材と組み合わせて用いており、その組み合わせ(畳+ベニヤ板等)で比較すると、畳がカーペットに比べて圧倒的に厚いことから、畳とベニヤ板の組み合わせはもっとも透過熱量が小さいのです(表1)
旧来の日本家屋の壁・天井などの保温性は洋式住宅に比べて劣っていますが、床仕上げ材に畳という保温性の優れた材料を用いるようになったのは、畳の敷き詰めが普及するようになった室町時代頃からの日本人の知恵なのです。

出典:日本女子大学理学部数物科学科 南澤明子助教授
表1 床仕上げ材とベニヤ(ラワン)と組み合わせたときの熱伝導率

一般的にあまり認識されていませんが、畳は優れた湿度調節機能をもっています。畳や木材は、大気中の水分を吸収したり放出したりしています。例えば梅雨などの高湿度期には水分を吸収し、冬の乾燥期には水分を放出することで湿度調節の役割をはたし、居住する人間の暮らしを快適にしてくれるのです。
畳を温度23℃で湿度の変化を53%から75%にステップ的に加湿し、24時間継続した後再び53%にステップ的に戻して24時間継続するという吸放湿性試験(図1)によると、稲わら畳の場合、24時間後の吸湿量は94.7g/m2でした。これは室内の湿度調節を目的とした内装材(これを調湿建材という)の同一条件での吸湿量が一般に80〜100g/m2であるので、調湿建材と同程度の吸湿量があるといえます。
この優れた湿度調整機能は、畳を構成している「イ草」や「わら」の内部構造に起因しています。
イ草はきれいな六角形の形をしたハニカム構造をしています。これは飛行機の構造にも採用されている非常に丈夫なものです。
また、わらも中空の組織構造をしており、畳を構成している材料は表面積が大きいため、水分を吸収・吸着する能力が高くなるのです。
資料提供:日本女子大学理学部数物科学科
南澤明子助教授

イ草の断面
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