ペインターズスタジオからのアドバイス

(1)オイルペインティングと健康に関して

すでにオイルペインティングを描かれている方も、またこれから始めようと考えておられる方も
オイルペイントやその溶剤の健康におよぼす影響に関しては少なからず感心をもっておられる事
と思います。 実際には多くのオイルペインターは人体に対して少なからず毒性のある溶剤等の
テレピン油、鉱物油やその他の無臭代用品等を使用しておられる事と思います。 また、オイル
ペインティングに興味を抱いて描いてみたいと思ってはいても、それらの毒性の人体におよぼす
副作用を気にして描いてみることをためらっておられる方も多いことでしょう。 でもそれらの
溶剤がなぜ人体に悪影響をおよぼし、またどの様にしたらペインティングから切り離す事ができ
るかが分ればきっとそのような心配ごとをせずにオイルペインティングが楽しめるでしょう。 

0) まず最初にオイルペインティングをすでに描かれている方やこれから始めようとされている
  方の大多数がオイルペイントそのものが人体に対して毒性が強いと考えておられると思い
  ますがペイント自体を比べて場合、オイルペイントもアクリルペイントも水彩ペイントも
   すべて同じピグメント(顔料等の色素)を使用して作られていますのでペイント自体の毒性
   の強弱をくらべることはできません。 但し、実際にペイントとして使用できる様な物質に
   するにはこれらのピグメントをいろいろなヴィークル(媒体)に練り込んで製品にします。
   ですから、これらの媒体やペイントを薄めたりする場合の溶剤自体に毒性を含んでいる事が
   ありますので、この事実をよく理解して使用するれば人体に対する毒性はかなり低く抑える
ことができるでしょう。                           
    
1) 全国いや世界のどの国にいっても多くのオイルペインターはテレピン油や鉱物油をペイント
  の薄め液や、筆を洗ったりするのに使用されていると思います。 この方法は何世紀にも
わたって使用され、また現在でも多くの学校や教室で使用方法が教えられています。
   慣習や授受により多くのペインターがテレピン油は最も一般的に使用されており便利な溶剤
  だと思っている方が多いでしょうが、実際それは正しいことでしょうか? いや一番使用
し易い訳でもまた一番安全な溶剤でもないでしょう。              

2) 最近は消費者団体の活動で商品の表示ラベルにも製品の使用注意書きが義務づけられて  
   きていますが、日本ではそのほとんどが ”子供の手の届かないところへ保管して下さい”
程度の注意書きであり、その印刷も非常に小さな活字での印刷であったりします。 
  欧米では一部の鉱物油に関しては上記の注意書きや火気厳禁以外に次ぎの様な注意書きが
 書かれています。 脳や人体に影響をおよぼす可能性もあり、皮膚に炎症をおこしたり
  皮膚から血液中に吸収される可能性もあります。 またスプレータイプのニス等は特別な
 マスクをしても脳に影響を与えたり十分な人体の保護が難しいものさえあります。  

3) 無臭タイプの溶剤を毒性がないと誤解されている方も案外と多いことでしょうが以外とこの
   無臭に改善される前のタイプと比べた場合と毒性はほとんどかわらない場合が多いのです。
   "Artist Beware"という文献によればこの種の無臭タイプのペイントシンナーやターペノイド
    は毒性が多少低くなってはいるが、毎日使用するペインターにとっては、毒性が多少低くても
健康にたいする危険度はあまりかわりないと書かれています。          

  4) この様な溶剤に比べってもっと身直にあり確実に健康に対する危険度が低い筆洗い液の代用品に
    ライトタイプの台所用の植物油があります。 これらにはスーパーマーケットで簡単に入手が
     可能で注意書きラベルも前者に比べても高温なった場合の発火性が印刷されているだけでこれは
     食用の油なんです。 これらのライトタイプの食用油にはサフラワー, ヒマワリ, キャノラ,   
  大豆油等があります。 食用タイプ以外にも入手が簡単なベビーオイルも使用できます。

  5) 実際に皆さんにも一度試していただければ御理解できると思いますが、オイルペイントで汚れた
    筆を一度、テレピン油や鉱物油で洗った筆と、上記の食用油で洗いその後マーフィーズオイル
     ソープ等のマイルドな洗剤とぬるま湯で洗った結果を比べると、同等か若しくはそれ以上により
      ペイントがおちて筆自体もソフトな状態を保つことができる事が分かっていただけると思います。
    また、上記の植物油に使用中の筆を数日の間放置しておいても、部屋中に臭いが立ちこめたり
気分が悪くなつたりする事もないでしょう。                  

        6) 現在でも一部のメーカーから絵画用として販売されている絵の具の中に使われている顔料の中で      
   毒性が非常に高いものはカドミウムやセレン化合物があります。 カドミュームイエロー、
  カドミュームレッドなどがこれにあたります。 硫化水銀であるバーミリオン、鉛を含む
   シルバーホワイトなども、毒性の強い顔料として知られています。 とくに鉛白は使用する
   頻度が高いので、そのぶん注意が必要でしょう。 鉛白の影響は急に体調が悪くなると言う
      よりは徐々に影響がでる様なので十分な注意が必要でしょう。 その他にも現代では使用され  
       なくなった顔料にマラカイト、アジュライト、クロムイエロー等の毒性の強い物もあました。   
    アンバーや酸化クロム等の微量の毒性の物は、チューブ絵具では毒性表記がされていませんが
顔料を使用して絵の具を作成する際にはこれらにも注意を払う必要があるでしょう。
(詳しくは各絵の具メーカーの資料を参考にして下さい)