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はじめに
既に風前の灯火となったカセットテープは、もう消えるのを待つばかり。
各社が技術力を競って発売し続けた高性能品、高級品の品質をこのまま過去の物として
葬り去って良いものなのか。音楽は娯楽、趣味の領域であるが故に、今更でも不合理な
選択肢があっても良いはずです。この期に及んで、アナログ録音のカセットテープを
使い続けるのも、完全に趣味の世界なのです。
とは言っても、究極を競い合ったカセットテープの生産は世界中でほぼ完了し、
高級品の入手は在庫のみとなりました。今後、世界中で今よりも性能がよい物は
二度と生産されない、という事です。そう考えると、結構、大事ぽいでしょ。
私自身はカセットテープ以外にDAT、CD−R、MD、一般的な録音機を
揃えて持っていますが、テープが一番便利なので常用しています。
実験比較の方法
実際に録音して聴き比べて「音質が良い、悪い」を書き連ねても、あまりにも個人的で
曖昧な判断基準なので、どれが良い音悪い音ではなくて、製品それぞれの性能を実際に測定し、
比較します。大事なのは、再生し録音される音源がテープによって、どれだけ変化を
するものなのかを、実測調査によって明らかにすることにあります。
手順は、CDプレーヤーでホワイトノイズを再生してテープに録音し、それを再生し、
パソコンのUSB方式の音声入力経由で取り込み、波形編集ソフトで周波数解析して、
原音のホワイトノイズがどう変化したかを比較します。
使用機材は
カセットデッキ ソニー K555ESA
CDプレーヤー ヤマハ CDX−890
音声入力USB オンキョー SE−U55
波形編集ソフト SONIC FOUNDRY SOUND FORGE
ホワイトノイズはCD−Rに録音されているので、再生時には0−22049Hzの
範囲で均等に再生されるようになっています。
ホワイトノイズとは、全ての周波数の音が均等に出ている音です。
パソコンに取り込む際のサンプリング周波数は48000Hz、16bitです。
録音されないはずの22050Hz以上がどうなるかを調べるために、
CDと同じ44100Hzにはしませんでした。
サンプリング周波数については、 こちらを参考にしてください。
録音レベルはノーマル、ハイ、メタル全てで音割れしない最大公約数の値にしました。
K555ESAでは+2が適当です。バイアス、HX−PRO等、録音の音質を
調整する機能は使用していません。
テープに録音するのは、新品か未録音部分です。重ね録音ではありません。
♪
始まり始まり
まずはノーマルから。
AXIA K1 アクシア PS1X
ソニー ES1 ソニー X1
TDK AD−X TDK AD1
パナソニック C60 輸入品 パナソニック GX
マクセル 響1 マクセル XL1S
全てのテープで14400Hz付近での落ち込みと、19200Hz付近での
向上があることから、「ノーマルは低音が強い」というのは中音域が弱いために
低音が強調されて、そう聞こえてしまうのだと考えられます。
続いてハイポジ。
アクシア AU2 アクシア K2
アクシア PS2 アクシア PS2S
ソニー ES2 TDK AD2
TDK DJ2 マクセル 響2
マクセル XL2S maxell UD2
0Hzから17000Hz付近まで直線的に減衰して、22000Hz付近まで
再度向上する形は、ノーマルと比べても面白く、これがハイポジの特性であることは
明らかです。「ハイポジは高音が強い」というのは、高音で急激に弱まらないので
低音だけが強調されることなく、聞こえるためだと思います。
続いてメタルですよ。時間ですよ〜
アクシア J’z METAL アクシア K METAL
ソニー METAL ES ソニー ES IV
マクセル UD METAL
見事な直線です。製品個々の性能差はあっても、ほとんどで直線的に
減衰しています。まさかここまで正確にホワイトノイズを録音できているとは
予想していませんでした。これがかえって、安価な物と高価な物の差をより、
分かり易くしているとも言えます。
まとめましょう。
結果は一目瞭然。CDなりレコードなりから出来るだけ、そのままの音質で録音したければ、
メタルテープ以外に選択の余地はありません。ノーマル、ハイポジは積極的に音を作り、
自分好みに仕上げるのに最適だと言えましょう。録音する音楽によっては、その作用で
丁度好きな具合にイコライザーをかけたような効果も期待できます。その場合、
イコライザーという「抵抗」を通さないだけ、音質がそこで劣化しないのは確かで、
やはりそこがテープならではの使い勝手の良さのではないでしょうか。
私自身も含めてテープを使う人が「音が良いテープ」と言うのは、実際にはイコライザーを
使ってないのに、それと同様の効果を最適な状態で聞いているだけのようです。
再生しているCDやレコード以上の音質になるなんて、無いことですからね。
同じ会社の中で比べると、面白いですね。値段、品質の差はちゃんとあるんですよ。
この中だと一番面白いのはTDKのMAとMA-EXでしょう。本当に性能に差があって
良かった。無かったら、どうしようかと思いました。そのうちアクシアのPSとPSXとか、
ちゃんと揃えて比較してみましょう。
未録音部分が無く、実測できなかったテープも結構ありました。今となってはもう
入手不可能ですが、ソニーのスーパーメタルマスターもやってみたいです。
♪
結果から思うこと。
七、八年前からCDの音質は「レベル競争」というのが激しくなって、低音を強く、
コンプレッサーを強くして、再生時の音量が出来るだけ大きくなる様に作られています。
それ以前のCDの再生音が小さく感じるのは、そのためです。
ノーマル、ハイポジにそのまま、調整無しに最近のヒットチャートを録音したら、
聴感上のノーマルテープの特性である「強い低音」に、更に「レベル競争の強い低音」が
かけ合わさって、不自然に低音の強さが目立ってしまう可能性があり、さらに、
ほとんどのミニコンポでは低音を強くする機能がありますので、「更に倍」(巨泉)。
いくら音質に無関心な人達でも、「これはおかしい」と思い始めた頃にMDが普及です。
この事から数年来の邦楽における音楽事情、特にヒットチャートに対して広く一般に
使われていた、ノーマルのカセットテープは対応策を講じてこなかったと言えます。
講じてこなかった時期と、カセットテープ衰退が始まった時期、本格的にMDが
普及し始めた時期とが符合するのは偶然ではないはずです。
レコード屋で六年間働いていたので、ノーマル、ハイポジ、メタルの区別をちゃんと
している人が皆無であることが現実なのも、知っています。ほとんどの人は
「値段が高いメタルが良い音」と信じているので、質問がある度に使っている機器を
聞いてノーマル、ハイをすすめていました。
そこから今もカセットテープを使っているのは、それまでの間にメタルテープを使い
不自然な低音に出会わなかった人、もしくは、それに気が付いてメタルだけを使い始めた人、
カセットデッキを使い録音で音質を調整することを知っていた人、純粋にMDの音質に
疑問を持ってテープに戻ってきた人、音楽ではなく録音機器が趣味の人だと思います。
あとプロのミュージシャンの中にも、カセットテープの音質をあえて使っている人もいます。
♪
私自身「ノーマルで一番良い音質」と信じていたXL1Sは、低音が他の物と比べて
強調されないようになっているのが特徴で、決してメタルに迫る性能ではなかったのが
意外でした。やはり低音の扱いが、音質の善し悪しを印象づけるのでしょうか。
その点でES1は低音が嫌みなほど強くて、大量に持っているのにも関わらずほとんど
使っていません。調べた中では、一番低音が強調されるようになってますね。
ただ特筆すべきは、PS1XとES1のみが低音で、原音より最高2dBも強く録音されて
います。これは低音強化のために、意図的に作られているでしょうか。
ハイポジは各社の苦心の跡がうかがえます。K2、ES2、響2、XL2Sが良い音だと
思い使っていますが、響2だけが綺麗に低音から高音まで減衰して行くのが印象的です。
私のハイポジ常用はK2と響2です。
メタルは各種頑張りましたが、KメタルとMA-EXが最後の双璧ですね。それでも、
グラフの僅かな変化を比べると、波形の小さな乱れの少なさからMA-EXが最も
理想的なカセットテープと言えるでしょう。
それにしても、この大きさのグラフなので微々たる差しか無いようにに見えますが、
実際に1dB、2dB、3dB程度の差を各種のテープが競い合っているのです。そんな差を
聞き分けて使っているとは、いやいや、大したもんですよ。
こちらも参考にどうぞ。
♪ゆらぎの値て、こんなもの。
紅茶嫌いのコーヒー牛乳。
周波数解析による、いくつかの音への考察
作ったのは、水道水真水です。
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